キーワードで見る食文化
韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
スペーサー
ファジョン

 韓国の春を彩る食べものに「ファジョン」(ファジョン)空白があります。ファジョンは漢字で「花煎」と書き、薄く延ばしたもち米粉の生地に花びらをのせて油で焼いた、空白ほんのりと甘い韓国伝統の餅菓子です。空白

 ファジョンはもともと、「ファジョンノリ」(ファジョンノリ空白:ファジョン遊び)という女の子の遊びの中で作られていたことが知られています。空白寒い冬が終わりつつじの花咲く旧暦3月3日ごろ、女の子たちが米粉や油、鉄板などを籠に背負って野山へ出かけ、空白そこに咲いているつつじの花を摘んではその場で「チンダルレファジョン」(チンダルレファジョン空白:つつじのファジョン)を焼いて食べ、歌ったり踊ったりして遊んだと言われます。空白冬の寒さの厳しい朝鮮半島において、草が芽吹き色とりどりの花咲く暖かい春の訪れが、空白どれほど人々の心を躍らせるものだったたか、現代の私たちには想像しきれない部分があるかもしれません。空白

 そして同様に、秋にも野に咲く菊の花を摘んで「クックァジョン」(クックァジョン空白:菊のファジョン)を作りました。このように、今でいうお花見・ピクニックのような場で、空白ファジョンは作って食べられていました。空白

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ファジョン
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■ファジョンに使われる花
 ファジョンにのせる飾りの花には、上記のとおりつつじと菊が古くから使われてきましたが、食べられる花であれば基本的にどんなものでも使うことができます。色がきれいで、味にくせがなく、可愛らしく飾ることができるものとして、現代ではすみれや梅の花、れんぎょう、バラ、菜の花、ナスタチウム、そして市販のエディブルフラワーもよく使われています。
 また、花以外にもよもぎの葉や春菊、乾燥なつめ、松の実などもしばしば使われます。
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■ファジョンの作り方
@ 上に飾る花びらや葉を摘み、雌しべや雄しべ、萼をとって洗い、水気をとります。
A もち米粉に塩少々と湯を加えて柔らかめにこね、小さく丸めてから直径5pほどの円形に平たく延ばします。
B フライパンに油をひき、Aを入れて弱めの火で焼きます。焦げないように両面を焼き、完全に火が通ったら花びらを形よくのせ、その面をさっと焼いてすばやく器にとります。
C 蜂蜜またはシロップをぬります。
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■変容する韓菓[ハングァ]
 韓国では近年のレトロブームとウェルビーイング志向の中で、伝統菓子である韓菓全般が、良い材料と好感度の高いカラー、洗練されたデザインを取り入れて高級感あるスウィーツに変容してきており、ファジョンにおいてもその流れがはっきりと見受けられます。
 もともとファジョンといえば、家で作る垢抜けない素朴な餅菓子でしたが、近年では熟練の作り手によってセンスよく作られたファジョンが斬新なカフェで提供されていたり、韓式膳フルコースのデザートとして登場するようになりました。また、韓国伝統文化を見直すための料理体験プログラムや市民イベントでも、ファジョン作りが取り入れられている例があります。
 こうした昨今のファジョンに見られる特徴は、生地自体に色をつけ、色ちがいの生地に幾種類かの花をデザインしたカラフルでセンスある個性的な仕上がりといえましょう。特に、植物そのものの天然色素を生かして、実に味わいのある色みを出している点が非常に特徴的です。たとえば、天然色素には次のような材料が使われます。
黒米を水につけてからミキサーで粉砕し、もち米粉に混ぜてこねる。→紫黒色 
黒ごまを炒ってからすり、湯ごねした生地に混ぜてこねあげる→黒い斑点模様 
ウチワサボテンの実(済州島で採れる)を熱湯につけ、その汁でもち米粉をこねる→サーモンピンク 
ビート(赤かぶ)のすりおろしでもち米粉をこねる→えんじ色 
紫芋のすりおろしでもち米粉をこねる→濃紫色 
ケールをミキサーにかけた汁でもち米粉をこねる→濃緑色 
抹茶を生地に加える→抹茶色 
かぼちゃパウダーを生地に加える→暖黄色 
大麦若葉パウダーを生地に加える→薄緑色 
 こうしてできた華やかで高級感のある韓菓は、おもてなしや贈り物、土産物として国内外を問わず人気が高まっています。
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